イミテーションに翻弄されているやつらを見た。
大量生産された戦うだけの道具、使い捨ての兵器。
それと分かっているはずなのに、遠目から見ても、あいつらは本気で戦う事に躊躇っている動きをしている。
まさかとは思うが、姿かたちが俺達に酷似しているから、……なのだろうか。
もしこの仮説が正しいのならば、戦士としては致命的な甘さだ。
その甘さが、命取りになり兼ねない。
そら見ろ。
一瞬の迷いが、周りに潜んでいたイミテーションどもを呼び寄せる。
多勢に無勢。
今更本気になってイミテーションに対峙したところで、数による劣勢は覆せないだろう。
――仕方が無い。
ガンブレードを携え、一気に戦闘の中心まで飛び込んでいく。
構える隙を与えずに先制攻撃でエアリアルサークルを繰り出し、怯んだところへ更に攻撃を畳み掛ける。
まさかと思うが、あの二人は、この程度の攻撃に巻き込まれてはいないだろうな?
一連の動作をよどみ無く進めた後、目線のみで二人の姿を追えば、さすがにそこまで素人ではなかったらしく、互いを背に攻撃へと転じていた。
仮にもコスモスに呼ばれた戦士だ、これくらいは当然の事か。
戦況は逆転した。
あとはこの偽りの命を塵に返す作業に没頭すれば良い。
一体、また一体と断末魔の声をあげて、イミテーションは霧散していった。
後に残ったのは――。
「助かった〜! サンキューな!!」
「お、もしかして一人か?」
「じゃあ旅は道連れだな、一緒にクリスタルを探そうぜ!」
……言うべき事は他にも多々あったが、流されて一緒に行く羽目になるのはご免蒙りたいという思いが先に出て、結局その場では同行を断る以上の話はしなかった。
確かに『仲間』ではあるが、ベタベタとくっついて徒党を組むだけが『仲間』では無い。少なくても、俺はそう思っている。
ジタンはまだ何か言いたげだったが、意外にもバッツの聞き分けが良くて助かったと言ったところか。
結局、俺の手にはバッツから渡された『幸運のお守り』が残り、やつらは別の道へと走って行った。
……『幸運のお守り』、か。
「スコールのことが心配なんだよ」
心配などしてもらわなくても、俺は戦いのプロとして訓練を受けている身だ。
兵士や騎士ならともかく、旅人や盗賊などという片手間に戦うやつらとは違う。
イミテーション相手に苦戦していたやつからの心配など、俺には無用だ。
そんな考えが、まったく無かったわけでは無い。
無理やり渡されたとは言え無下に捨てるわけにもいかない、その『幸運のお守り』とやらを眺めてみる。
根元に施された丁寧な装飾を見て量るに、あいつの大事なものだと容易に判別できる物だ。
最初に見た時に汚いと思った羽のくたびれ具合は、あいつがこの『幸運のお守り』を大切にしていた年月の証なのだろう。
……それに。
この世界に呼ばれた時に身に着けていたというだけでも、特別な思い入れのある物なのだと、今更になって気付く。
そんな大事な物を、なぜ俺なんかに渡すのか。
理解に苦しむ。
イミテーションと戦う事に躊躇いを見せたり、戦場で他人を気遣うなど。
――――俺には到底理解など出来ない。